【大垣知哉の「Life is good! ~豊かな暮らしのために~」】
今回のテーマ「不 安」
「見通しが立たない将来が不安…」新型コロナウイルス感染拡大を受けて、このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか?私のようにエンターテインメントに身を置くシンガーはまさにその通りで、毎日をハラハラドキドキしながら生きています。そんな不安をどう対処すれば良いか?不安を感じずに生きることは可能か?など、不安に関するあらゆる疑問を帝塚山大学心理学部准教授および、こころのケアセンター長の中地展生(なかじ のぶお)さんにお話を伺いました。
帝塚山大学こころのケアセンター長 中地 展生さん
(取材日:令和2年8月)
なかじのぶお 昭和51(1976)年、三重県生まれ。現在、帝塚山大学心理学部准教授および帝塚山大学こころのケアセンター長。専門は臨床心理学。臨床心理士と公認心理師の資格を持ち、特に不登校やひきこもりの家族支援、グループカウンセリング、地域連携などに尽力。最近では、奈良県教育委員会と連携をした不登校予防などを目的とした小中学校に大学生ボランティアを派遣する取り組みや奈良市ではボランティア団体や社会福祉協議会と協力してひきこもり当事者や家族の支援を行う。
◎〝良い不安〟と〝良くない不安〟がある
Q. 生きていると誰でも〝不安〟に駆られることがあります。その〝不安〟はどこから生まれてくるのでしょうか?
中地 生物学的かつ心理的な要因はさまざまありますが、簡単に言うと「安心や安全が不在になること」が大きな原因です。現在のコロナ禍においては、目に見えない漠然としたウイルスに安全が脅かされて、不安を感じる方が増えているのだと思います。
Q. 不安がなくなるなんてことはあり得るのでしょうか?
中地 なくなることはないでしょう。しかし、不安にも〝正常な不安〟と〝過度な不安〟があります。〝正常な不安〟は起こりうる危険に備え、問題解決へ向けて行動を起こす原動力となります。つまり、成長の上では必要不可欠なものです。しかし、〝過度な不安〟は生活に支障をきたします。例えば、手を洗ったあとでも汚れを気にしたり、何度も家の施錠を確認したりなどです。〝過度な不安〟は繰り返されて、特定の恐怖につながることもあります。ちなみに恐怖と不安は異なり、恐怖は対象があり、不安は対象があいまいであることが特徴です。
◎相談できる相手を作ろう
Q. 不安を感じやすい人と感じにくい人があるように思います。その差はなんでしょうか?
中地 とくに几帳面な人が不安を抱えやすいと言われています。感じ方の差も家庭や職場という環境要因、習慣や遺伝などの個人要因など、さまざまな要因が関係します。特に大きな原因としては、社会的要因があります。それは困った時に相談できたり、頼ったりできる人が周りにいるかどうかということです。〝ソーシャルサポート〟と呼び、その相手は家族でも、友人でもいいです。やはり孤立してしまうと不安になりやすいので、日頃から他人とのつながりを持つことが大切となります。ただ、「不安を感じない」という方でも、体のダルさや肩のコリ、腹痛などの体のどこかに異常が出ることがあるので、そういうサインを感じとることも大切です。
◎一人時間を確保することが大切
Q. 不安を緩和する方法はありますでしょうか?
中地 一人の時間を確保しましょう。例えば、好きな本を読んだり、映画を見たり、音楽を聴いたりです。散歩でいいので体を動かすことも大事です。あとは、ものごとをいつもとは違った角度から捉えられるようにすると良いでしょう。このことを〝リフレーミング(reframing)〟と言います。「優柔不断=慎重な性格」、「あきっぽい=好奇心旺盛」といったようにフレームを変えてみると心持ちが変わってきます。
◎困ったら専門家にご相談ください
Q. 最後に読者にメッセージをお願いします。
中地 大切なのは一人で悩みを抱え込まないこと。どうしようもない時は迷わず専門家を頼ってください。私自身ドゥーイング(doing:教えたり、指導をしたりすること)ではなくビーイング(being:寄り添うこと、ともにいること)を大切にし、会話の中から相談者自身が答えを見つけられるように進めていきます。現在、新型コロナウイルス対策のため、新規の受付は少し長くお待ちいただいていますが、気軽に、帝塚山大学こころのケアセンターまでご連絡ください。