【私を支える魔法の言葉】
奈良はつながり、広がる場所
シンガーソングライターの大垣知哉が「今、会いたい輝く女性」を取材し、人生の支えになった大切な言葉とストーリーを綴る「魔法の言葉」を連載。
Nara観光コンシェルジュ 友松 洋之子さん
(取材日:令和元年12月)
ともまつ・よしこ 昭和33(1958)年9月2日生まれ。武庫川女子短期大学教育科幼稚園課程卒業後に学校法人報恩寺学園緑ヶ丘幼稚園に勤務。結婚で退職。平成21(2009)年より奈良にて観光ガイドを始める。同24(2012)年、奈良まほろばソムリエ合格。同28(2016)年、第1回 奈良観光コンシェルジュ最優秀を受賞。現在、NPO法人奈良まほろばソムリエの会の一員としてとして活躍中。NHK文化センター梅田教室「奈良グルメ歴史旅」「大和路を行く」講師。令和元(2019)年 奈良テレビ「ゆうドキッ!」木曜日 準レギュラー。同2(2020)年1月17日(金)午後3時時から、特別講演会「若草山焼きについて」を奈良公園バスターミナルレクチャーホールにて開催。問い合わせは☎0742-32-2112。
奈良はつながり、広がる場所=奈良での出会いはさらなる出会いにつながり、想像し得ないほどの広がりを見せてくれる。
奈良との出会いで人生が一変しました。同級生である桂米團治(かつら よねだんじ)さんから「そんなに歴史好きだったっけ?」って驚かれるくらい。そうなんです。奈良に来るまでは歴史や社寺などにはまったく興味がありませんでした。それが今では観光ガイドを務め、テレビで奈良情報を発信する役目までいただけるなんて。ほんと自分でもありえない気持ちです。
《写真左》観光ガイドとして活躍する友松さん。友松さ んのツアーをお目当にするファンがいるほどの人気ぶり《写真右》「第1回 Nara観光コンシェルジュアワード」にて日本語ガイドの部で最優秀賞を受賞
主人の仕事の影響で転勤が多かった我が家。大阪勤務の際に、住まいとして選んだのが奈良でした。当時は会社が借りた家に住む、いわゆる代用社宅。奈良は自然豊かで、人も優しく、住まいとしてとても良い環境でした。しかし、主人の転勤がまた決まり、家族で静岡に転居することに。
奈良から離れると、不思議と奈良での暮らしが恋しくなりました。そんなある日、乗った新幹線で、偶然にも奈良にいた頃のご近所さんと出くわし、かつて住んでいた奈良の代用社宅が売りに出ているという話を聞いたのです。居ても立っても居られず、すぐに購入を決意。「終の棲家」として奈良を選んだ瞬間です。そして、静岡、東京と転居を経て、奈良へと戻ってきました。
奈良に住んでいるなら、奈良での楽しみを見つけようと、秘仏開帳のタイミングに合わせて、社寺に足を運ぶようになりました。そこで出会う美しい仏像たち。その由緒を聞けば、私でさえ知っている歴史上の人物たちが関わっているではありませんか。これがあの人物が建てた建造物!?あの神社とこの神社はつながりがあるの!?知れば知るほど奥が深く、まさに感動の連続でした。気がつけば、奈良にどっぷりとのめり込んでいました。
知りたい気持ちが増えると、伝えたい気持ちも増す性分。「修学旅行生のガイド募集」の広告を見かけ、迷わず応募しました。さらにその経験は知識を深めたいとい う熱意に変わり、奈良商工会議所が企画する「奈良まほろばソムリエ検定」(奈良検定)を受け、最短で「奈良まほろばソムリエ」を取得。そして、観光ガイドとしての役割をいただくようになったのです。
ガイドとして私が大切にしているのは、歴史をただ表面的に伝えるのではなく、実際に自分が事前に足を運び、感じた体験を織り込むことです。さらに説明をわかりやすくすること。必要であれば文字をフリップにしたり、イラストを用意したり、面白いエピソードを添えたり、工夫を凝らします。当然、準備には多大な時間を要するのですが、お客さんから笑顔や拍手をいただけるとその苦労はすべて吹き飛んでしまうのです。
奈良検定が始まって10年目という節目の年に、高度な技量とおもてなしの精神を持ち合わせるガイドを選出する「第1回 Nara観光コンシェルジュ アワード」が開催され、参加することになりました。
たとえステージの上でもいつも通りのことをやろうと、「ここは車が通りますから気をつけてくださいね」といった気遣いを含めたガイドを行い、日本語ガイドの部で最優秀賞をいただきました。まさに「奈良が大好き」という自分のフィルターを通すことの大切さを実感できた瞬間でした。
先日、常連のお客さまからうれしいお言葉をいただきました。「コースじゃなく、誰が連れて行くかで選んでいるんだよ」と。まさにガイド冥利に尽きるお言葉です。お客様の笑顔のためなら全力を尽くす。私ができるのはそれしかありません。その気持ちの最たるものこそ、私がガイドの最後に発する決め台詞なのでしょう。「今日はありがとうございました。再び、奈良へ。さいなら!」