独創的な響き届ける和太鼓グループ
世界に轟く〝明日香の力〟
（取材日：平成29年12月）
中学、高校の青春時代を奈良で過ごしたシンガーソングライターで俳優の大垣知哉さん（写真左から３人目）が、奈良にゆかりのある伝統を継ぐ人や一流のエンターテイナーたちと、奈良への思いを中心に対談します。
「倭-YAMATO」代表 小川 正晃さん
世界各国を舞台に独創的な和太鼓の響きを届けるグループ「倭―ＹＡＭＡＴＯ」は、日本のはじまり明日香を拠点に活動し、年間約２００公演のライブをこなす。１９９３年の結成からグループを引っ張ってきた代表で明日香村国際親善大使の小川正晃さん（写真右から３人目）が、大垣知哉さんと対談し、太鼓との出会いからこれまでの軌跡、明日香の土地からもらう不思議な力、またそのエネルギーを太鼓を通じて多くの人に届けていきたいと語った。
大垣 小川さんが太鼓に出会って、倭を結成されましたが、太鼓に惹かれた理由を教えてください。
小川 倭の結成は、僕の地元の橿原市十日市町のとある神社にある太鼓を母親が見つけてきたことがきっかけです。「この太鼓で神社のために何かしなさい」と言う母親の言葉から、自分の仲間４人で叩いたことが原点になります。これを見てくれた人たちが「うちの小学校でやって」とか「うちの老人ホームに来て」とか、そういう話をいただいて、太鼓を打って回るようになりました。
そういったことをやらせてもらっているうちに「太鼓をやりたい！」って言ってくれる人たちが増えてきました。みんな仕事をしながら一緒に太鼓を打つ生活を続けていると、しばらくして「仕事辞めてきた。もっと太鼓をしたい」と言い出す奴が出てくる始末…。
こうなると、食べていくためのことを考えないといけません。難波駅前でお巡りさんと追いかけっこしながらゲリラライブの開催です。でも本当にお客さんが喜んでくれたんです。「太鼓っていいな」と、あらためて感じました。ここで「世界へ」と意識しました。
大垣 中国公演を皮切りに、世界54カ国を回られたとのことですが、たくさんのご苦労があったのではないですか。
小川 世界中のエンターテイナーが集まるイベントがスコットランドのエディンバラで毎年開催されているのですが、ここで受けるかどうかが今後を占うと言われています。
１９９８年、僕たちはこれに初めて参加するため、ロンドンからぎゅうぎゅうに太鼓を詰めた車に乗って訪れました。パフォーマンスを披露し、地元の大きな新聞で僕たちは「５つ星」をいただき、話題になりました。
そのおかげでチケットは完売。各地でゲリラライブをやってお金をもらい、ご飯を食べる、そんな生活を続ける中で、やっぱりライブっていいなと、これで食べていければいこうと、みんなで認識できたと思います。
大垣 奈良、明日香を本拠地というか、拠点に選ばれた理由があったのですか。
小川 自分の地元で身近だという理由もありますが、日本の始まりに選ばれたこの土地には何か理由があって、大きなエネルギーがあると思います。「明日香」というこの土地が僕らを使って何かを伝えようとしている、そんなことを実感させられる時があります。世界に明日香の良さ、素晴らしさを伝えていきたいですね。
大垣 世界を舞台にされている倭さんの新春の奈良公演が楽しみです。その意気込みと、今後の展望を教えてください。
小川 太鼓って打てば鳴るシンプルなものです。子どももこの太鼓の音に何か気付くことがあると思います。そんな元気を引き出したい。僕たちは世界を回って、奈良に帰ってくるということをさせてもらっていますが、奈良へ帰ることは、僕たちもエネルギーをもらって充電させてもらうような感覚です。
１年分のエネルギーをここで皆さんからもらって、世界へ発信する特別な場です。顔を知った人たちが来てくれて、同窓会や参観日、そんな雰囲気がありますが、しょうもないもんはもちろん見せられない。挑戦者の気持ちでいつもさせてもらってます。
今後はやはりこの倭イズムを次世代へ紡いでいくことが大切かと思います。１日１日を挑戦し続けること、折れないこと、倭のオリジナリティを追求すること、それら大切なことを若手に伝えていきたいと思います。若手メンバーは僕らの世代とは違う環境で育ってきたこともあり、言葉では伝わらないこともありますが、そういったことも太鼓の響きから伝えられるんじゃないかと思います。
おがわ・まさあき 1967年生まれ。1993年に和太鼓「倭」を創設。「倭」はこれまでにイギリスやオランダ、ドイツなど世界54カ国で3500回以上の公演を行っている。「倭」で演奏されるすべての曲の作曲、振付、舞台美術などを担当している。近年では、「倭」が拠点を置いている明日香村、奈良県と協力した公演活動も多岐にわたり、地域文化の活性化に貢献している。 URL：http://www.yamato.jp/
