大人が演奏できる場をたくさんの人に提供
「楽器に触れた毎日、再び日常に」
（取材日：平成29年7月）
中学、高校の青春時代を奈良で過ごしたシンガーソングライターで俳優の大垣知哉さん（写真左上右）が、奈良にゆかりのある伝統を継ぐ人や一流のエンターテイナーたちと、奈良への思いを中心に対談します。
奈良県吹奏楽連盟理事長 福島 秀行さん
吹奏楽が盛んな奈良県だが、中学や高校を卒業すると楽器に触れる機会が少なくなる―。そんな環境を打破したいと、県吹奏楽連盟理事長で指揮者の福島秀行さんは、男女問わず、演奏できる場をたくさんの人に提供する活動に励んでいる。子育て中の母親たちが子どもと参加できる吹奏楽団などをいくつも創設し、指導している。「楽器に触れていた毎日を、再び日常にする、そのきっかけを作りたい」と語る福島さんと、大垣知哉さんが対談した。
大垣 奈良は吹奏楽が盛んなイメージがありますが、福島さん自身はいつから吹奏楽を始められたのですか。
福島 そうですね、奈良は他府県と比較して盛んだと思います。僕自身は王寺中学校へ入学した時、３つ上の兄の影響でトランペットを吹くようになりました。
中学、高校と吹奏楽を続け、大学生の時に市民吹奏楽団「セントシンディアンサンブル」を仲間と共に作りました。ここで指揮をやることになりました。
大垣 福島さんの指揮は本当に気持ちがいいというか、相当楽しそうに見えます。キレキレでかっこいいです。
指揮者って舞台とか演劇で言うと演出家みたいな感じですか。
福島 ありがとうございます。指揮は最初にやったときから今でもそうですが、なぜかまったく緊張しないんです。自分にフィットしていると、感じますね。 見た目の派手さはありますが、まさに演出家のように、練習から一緒に作り上げていくことが指揮者の役割でもあります。そういう作り上げていくことが好きなんですね。
大垣 たくさんの市民吹奏楽団を作られたり、指導をされていますね。
福島 今は自分の楽団のセントシンディアンサンブルに加えて６つの楽団の指導をさせていただいています。そして指導とは別に、僕はママさんブラスを作ることにすごく力を入れています。
中高を卒業すると楽器に触れる機会が少なくなることをすごく残念に思っていたんです。日本は吹奏楽大国と言われていて、それは間違いないと思うんですが、学校の部活動が中心なんです。大人が活動できる場が極端に少なくなります。さらに子育て中の女性、母親となると、本当に活動できる場がなくなってしまいます。
これらを解決したいと思い、子ども連れで吹奏楽に参加できるママさんブラスを作ることに携わりました。
大垣 なるほど、吹奏楽をやっていた方はたくさんいらっしゃるけれど、大人になって演奏する場がなくなってしまう。そういう場はたくさんの方にとってうれしいことですよね。僕も演奏会や練習を拝見させていただいた福島さんが指導をされている楽団の一つ「吹奏楽団ベリーズけいはんな」さんは、たくさんの女性の方々が子どもさんを連れて練習に励んでおられますね。
福島 こういう受け皿がたくさんできると、たくさんの方が楽しみ、活躍する場ができる、それが楽しいなと思います。
また一番最初に作ったママさんブラスは創設から10年以上が経過しています。そのころお母さんに連れられて来ていた赤ちゃんは小学生に、小学生だった子は中学生や高校生になり、そのほとんどの子が吹奏楽をやってくれています。
青春時代に楽しんだ音楽を一生やってもらいたい。楽器に触れていた毎日を、もう一度日常に組み込んであげたい。それが僕の願いですね。そうして子どもたちにもつながっていくことが文化になる、その未来がうれしく思います。
大垣 たくさんの方に吹奏楽の活躍の場を提供することに加えて今後、どんな活動を考えておられますか。
福島 奈良はこういうママさんブラスの先進地ということで認知され始めています。今年は国民文化祭が奈良で開催されることもあり、「ママさんブラスフェスティバル」という初めての全国大会をかしはら万葉ホールで11月４日に開きます。
たくさんのママさんブラスの交流ができればと思っています。
ふくしま・ひでゆき 1966年生まれ。奈良県吹奏楽連盟理事長。セントシンディアンサンブル代表。公共文化ホール館長を経て、現在は吹奏楽指導者として、大阪・京都・奈良で６つの市民バンドやママさんブラスを指導・指揮する。また、音楽プロデュース業や司会、月刊「バンドジャーナル」を中心とした音楽ライター活動など、幅広くマルチに活躍中！ 【撮影場所】けいはんなプラザ 住所：京都府相楽郡精華町光台1-7
電話：0774-95-5115
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