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書道と妖怪画の融合 作品通じて魅力を発信

妖怪書家 逢香さん

(取材日:令和元年12月)

 「橿原神宮御鎮座百三十年記念大祭」の題字や妖怪画を描いて活躍している逢香さん(25)は、昨年11月に奈良市観光大使に任命された。書道と妖怪画を融合した作品は、奈良墨と「化ける」にちなんだタヌキの毛の筆で描き、独特の世界観を見せる。来月2月には世界遺産に登録されている元興寺(奈良市)に奉納した自身の作品「令和の元興神(がごぜ)」が絵馬として使用されるなど、作品を通じて奈良の魅力を発信し続けている。


 逢香さんが書道を始めたのは6歳から。母親が家で書道教室を開いていた縁で、自然と筆を持つようになった。当時から絵を描くのも好きで大学を選ぶ際には書道か美術かで悩んだという。
 「逢香」という名は書の活動をする際に使用する雅号で、書道科に通う大学時代に自分でつけたもの。様々な人や、自分が好きな妖怪や化け物のもつ雰囲気を「香り」に例え、そういった存在に「めぐり逢う」といった意味が込められている。
 妖怪に興味を持つようになったのは大学に入ってから。くずし字の授業の際に使用された資料の挿絵として妖怪が描かれていた。初めて見た妖怪の絵のインパクトに、文字とともに妖怪の姿に心を惹かれ模写するようになった。
 また妖怪について調べるうちに「すごく怖い存在に見えて、でも登場する妖怪はとても茶目っ気にあふれている。どこか社会にのけ者にされているところもあるが、その生きづらい場所で個性を認め合って楽しそうにしている。その姿に周りの人たちと違うものに興味をもち馴染めないといった、自分が感じてきた生きづらさを重ね合わせたところがあった」と逢香さんは話す。
 妖怪画は当初、ボールペンで描いていたが、身近に書道で使用している墨があったので、どうせなら墨で描こうと思い使うようになり、趣味として描いていたものを次第に自分の作品として取り入れるようになっていった。
 逢香さんは自分の作品を書く際に、奈良墨とタヌキの毛を使った筆を使用する。筆に使用される毛は「一般的に用いられるイタチか馬よりも硬くおどろおどろしい線を書くことができるので自分の作品にも合っている」といい「化けるということからもタヌキが好きで、自分に大好きなものが重なった」と笑顔を浮かべる。
 奈良墨は幼少のころは意識していなかったが、大学から意識して使うようになった。奈良墨を使い、これからも書の魅力を発信していって欲しいということから、昨年11月に奈良市観光大使に任命された。
 「書くことの面白さを感じてもらうのがまず一番。筆なので持ちなれていないと書きにくいということもあるが、自分の気持ちをあらわにできる。昔は当たり前の筆記用具だったものなので、今も同じような感覚で書道をやってもらいたい」と語る。
 来月2月には、奈良市の元興寺に逢香さんが奉納した作品「令和の元興神(がごぜ)」が絵馬として使用される。「10年以上住み続けた好きな奈良で、世界遺産に登録されている元興寺の絵馬を描かせてもらえることは、自分が奈良に根付けたと感じる。棟方志功さんや杉本健吉さんといった有名な人たちの次に自分の作品を使ってもらえるのはとても光栄」と話し、今後も書と妖怪の魅力を幅広く伝えていくため、筆を走らせる。


おうか
 平成6(1994)年生まれ。大阪府出身、奈良県在住。6歳から書道を学ぶ。大学に入学後、変体仮名の授業を受けたことをきっかけに個性豊かな妖怪たちに興味を持ち、主に墨を使って描きはじめる。イベントでは書画・書道ワークショップを開催。同29(2017)年には妖怪ウォッチシリーズ「黒い妖怪ウォッチ」のキャラクターデザインとタイトルデザインを担当。平成31(2019)年、「橿原神宮御鎮座百三十年記念大祭」揮毫。令和2(2020)年には世界遺産 元興寺に奉納した「令和の元興神」作品が新しい絵馬のデザインとなる。
URL:https://www.xxxouka.com/

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