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【私を支える魔法の言葉】

シンガーソングライターの大垣知哉が「今、会いたい輝く女性」を取材し、人生の支えになった大切な言葉とストーリーを綴る「魔法の言葉」を連載。

俳優 桜花 昇ぼるさん

(取材日:令和元年7月)

 おうか・のぼる 奈良県斑鳩町出身。幼少期から奈良市の旧あやめ池遊園地で、OSK日本歌劇団の舞台を観て育つ。平成5(1993)年、OSK日本歌劇団入団。同20(2008)年トップスターに就任。同26(2014)年に歌劇団を退団し、さまざまな舞台に出演。また、講談師「旭堂南桜(きょくどうなんおう)」、「花柳寛おう昇」の名をもつ。【最新情報】8月10日18時から大阪城天守閣前本丸広場にて「豊国踊りに真田幸村参上」、9月23日12時からファンタイム・ボニーラにて「桜花昇ぼるバースデーライブ」、11月23日14時から三郷町文化センターにて「歌劇ル・トロワ」、に出演。 詳しくはhttps://ameblo.jp/noboru-oukoku


愛=いただいた「愛」は、「愛」でお返ししたいです。だから、私は芸を通して、たくさんの「愛」を届けていきたいと願っているのです。


 斑鳩の緑や星、月、自然にあるものをまるで観客のように見立てて、大好きな音楽を奏でる。そんな幼い頃の日常が、今につながったのでしょう。
 当時の私は勉強も運動も苦手で、引っ込み思案。ただ、母によく連れていってもらったOSK日本歌劇団が大好きでした。見て楽しむだけで、その世界に飛び込もうだなんて思いもよりません。しかし、高校生の頃、TVでやっていた宝塚歌劇団の「ベルサイユのばら」を見て、体に電流が走りました。
 「私も舞台に立ちたい…」でも、訓練も受けたことがない私が宝塚に受かるはずもない。そんな時、母が「子どもの時からご縁があるOSKを受けたら?」と背中を押してくれ、幸運にもOSKにご縁をいただいたのです。


《写真左》退団して5年、今も男役のロマンを追求する《写真右》桜花さん3歳、あやめ池円型大劇場前で


 何事も不器用で、出来が悪い。体力もない。先生や上級生の方に怒られてばかりで、何度も壁にぶつかりました。「66期生からはスターが出ない」とさえ言われました。
 しかし、身長が高いことから、男役をやっていく中でだんだん表現の楽しさを知り、いろんな役をいただくようになりました。傍目には順調だったのでしょう。しかし、私は、人間力が伴っていない自分の演技に満足がいかなくなっていき、「このまま続けていいのか」という悩みを抱えていました。そのような状況のある日、上級生の方からの電話が。告げられたのは、TV報道で知ったという、OSKの解散でした。
 翌日、劇団員が集められ、正式に解散の通達を受けました。泣いている人、青ざめてガタガタ震えている人、あの時の重い雰囲気はいまだに忘れられません。私は、近畿日本鉄道からの支援を打ち切られたOSKと未熟な自分とを重ね合わせ、こういう時期なのだとある意味、冷静な気持ちでいました。
 その後、上級生の方々の呼びかけにより「OSK日本歌劇団存続の会」が立ち上がり、私も参加させていただきました。私自身、「もう一度生まれ変われるチャンスをいただける!」そう思ったのです。たくさんの方々からの応援とお力をいただき、OSKは再結成し、平成16(2004)年に大阪松竹座で66年ぶりに「春のおどり」を復活する事ができました。
 しかし同19(2007)年、OSKは劇団に多額の未払いのあることが発覚し、民事再生を申請する事に。その最中の同20(2008)年に、私はトップスターに就任しました。
 山あり谷ありのOSK人生。気が付けば、OSK存続のためにがむしゃらに走り続けて22年が経っていました。大阪松竹座、新橋演舞場という素晴らしい劇場で退団公演を用意していただきましたが、その公演でも自分の未熟さを痛感し、それが今にもつながる原動力になっています。
 真田幸村という役は私にとって大きな出会いでした。その機会をくださいましたのは大阪城天守閣の北川央館長です。OSKを卒業した翌日から「大坂の陣・歌劇武将隊」という大坂の陣で活躍した5人の武将隊が組まれ、私は真田幸村の役をいただき、お稽古に入りました。
 さらに、このチームには宝塚の男役スターさんたちも参加されていて、まるで夢のような素晴らしい機会をいただいたのです。OSK時代から演じ続けて12年、この役はまさに再起を願う自身の気持ちにリンクし、奮い立たせてくれるものでした。
 以前から「愛」という言葉が好きでしたが、その思いを芸に乗せることができなかった自分がいます。今でも決して上手くはないけれど、たくさんの出逢いや応援くださいます皆さまと心を通わせ、「愛」をお届けする表現者としての道が、今やっと始まったような、そんな気がしているのです。

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