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県内各地に伝わる妖怪の伝承を取材
先人からのメッセージを後世に

 中学、高校の青春時代を奈良で過ごしたシンガーソングライターで俳優の大垣知哉さんが、奈良にゆかりのある伝統を継ぐ人や一流のエンターテイナーたちと、奈良への思いを中心に対談します。

妖怪文化研究家 木下昌美さん

(取材日:平成30年4月)

 妖怪から聞こえる先人のメッセージ―。奈良県各地に伝わる妖怪の伝承を取材している妖怪文化研究家の木下昌美さんと、大垣知哉さんが対談し、木下さんは「妖怪が生まれたのは人々の生活の中にある何らかの警告や意味が込められていて、そのほとんどは口伝で伝わっている。これを後世に伝えながら、妖怪を通じて奈良に興味を持つ人を増やしたい」と語る。木下さんは4月24日、各地を取材した妖怪話をまとめた書籍を発刊した。


大垣 妖怪文化研究家として妖怪に関する新聞の発行や講演、ツアー案内など、さまざまな活動をされていますが、妖怪に興味を持ったきっかけは何だったんですか。


木下 小さい頃から本を読むのが好きで、その中にはお化けが登場する本が多くありました。また、テレビでは「まんが日本昔ばなし」がすごく好きでよく見ていました。そこでもお化けが出てきたり、不思議な体験を語った話が多く、面白いなと興味を持つようになりました。
 妖怪にはまったきっかけは、小学校の時に図書館で読んだ漫画家の水木しげるさんの自伝的エッセイ「のんのんばあとオレ」です。その中では近所のおばあちゃんが少年のしげるさんに不思議な体験を聞かせてくれるんですが、自分の周りでそういった地域に根付いた話をしてくれるお年寄りがいなかったので新鮮に感じました。


大垣 福岡ご出身の木下さんが、奈良に興味を持ったのはなぜですか。


木下 妖怪の研究で奈良の大学院に進み、奈良に住むようになって妖怪の話が今も息づいているようで「あ、この世界だ」と納得しました。町が新しくなり、その人たちの考え方もだんだん新しくなっていくなかで文化や風習はどんなに古い町でも更新されていくものです。しかし、奈良には歴史が古く残っていて文字通り時が止まっているんだという感じがしました。


大垣 奈良は歴史と自然が調和されていて、それが昔話のまま現存する世界を感じたんですね。学ぶところから、今度はそれを伝えようと思ったきっかけは何だったんですか。


木下 妖怪話の研究で、その場所に住んでいる人たちから話を聞いていた時に「この話久しぶりにしたわ」「亡くなったおじいちゃんがそういう話をしていたが、自分はもう覚えていない」という話を聞きました。
 妖怪話を話せる人がいなくなってしまうと、伝わっていた妖怪そのものが存在しなくなってしまう。そう感じ記録に残しておきたいと思ったのが最初です。妖怪話は文化財のように形があるものではないので言葉で伝えるしかない。書いておかないと消えてしまうんです。
 十津川村の方では「一本だたら」という人を食べる妖怪の話が伝わっいます。冬の雪深い地域、この妖怪は12月の20日に山に入ろうとすると出てくると伝わります。「この時期は危険だ、山に入るな」という先人のメッセージが「一本だたら」に込められている。そんな妖怪誕生の背景に思いを巡らし、耳を傾け伝えていきたい。


大垣 妖怪話にはそんな先人のメッセージが込められているんですね。今後はどんな活動をしていきたいですか。


木下 妖怪ツアーの案内をさせていただくと、若い女性の参加に驚かされます。奈良といえば大仏があって、考古的な価値のあるものがたくさんあるというのは有名で、それが好きという人も多いです。
 そうじゃくて目に見えないものにもたくさんの魅力があるのが奈良。妖怪を通じて、そういった魅力を感じてくれる若い方を増やしていきたい。そうして他府県から来てもらえるきっかけになってほしいと思っています。


大垣 ブームを作り、奈良に妖怪を求めてたくさんの人が来てくれることを楽しみにしています。

 

きのした・まさみ
 奈良県在住。子どものころ「まんが日本昔ばなし」に熱中し、水木しげる氏の漫画「のんのんばあとオレ」を愛読するなど、怪しく不思議な話に興味を持つ。同志社女子大学、奈良女子大学大学院でお化けや、説話文学における〈鬼〉を中心に研究。現在、県内の伝承や口伝を取材し、大和政経通信社から月刊電子新聞「奈良妖怪新聞」を発行している。
 
奈良妖怪新聞
 妖怪文化研究家として活躍する木下昌美さんが伝承や口伝を深く取材し、執筆をしている大和政経通信社が毎月第1月曜日に発行する電子新聞です。1年分を1冊にまとめた総集編は現在2巻まで発刊中。奈良県内では啓林堂書店(郡山店、奈良店、新大宮店、学園前店、生駒店)、ジュンク堂奈良店の店頭、ネット通販などお買い求めになれます。
販売サイト:http://yamatoseikei.theshop.jp/
 
【撮影場所】源九郎稲荷神社
住所:奈良県大和郡山市洞泉寺町15
電話:0743-55-3830
URL:https://gennkurouinari.jimdo.com/
ブログ:https://ameblo.jp/gennkurouinari/

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