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一枚の紙から切り出される花鳥風月
切り絵の新たな可能性模索

(取材日:平成30年3月)

 中学、高校の青春時代を奈良で過ごしたシンガーソングライターで俳優の大垣知哉さん(写真右)が、奈良にゆかりのある伝統を継ぐ人や一流のエンターテイナーたちと、奈良への思いを中心に対談します。

切り絵作家 石賀 直之さん

 ミリ単位の切り出しで描かれ、命を吹き込まれる花鳥風月―。新進気鋭の切り絵作家として活躍している石賀直之さんが、大垣知哉さんと対談し、自然豊かな奈良の地から得られる創作意欲、額に入れて飾るだけに収まらず、光と影を見せるアクセサリーに仕立てるなど、切り絵の新たな可能性について語った。石賀さんは今秋、大阪で開く個展に向け「自分の技術や精度を高めて表現をもっと豊かにしていきたい」と意気込んでいる。


大垣 石賀さんの作品は鳥や花など自然を扱っているものが多いように感じました。これは生まれた時から過ごしている奈良の影響があるのですか。


石賀 そうですね。自分は作品を作るときに、先にテーマを決めることをせず、下絵を描き進めていく中で自然と出てきたイメージを大切にしたいと考えています。
 下絵を描くときに自分の中から自然に出てくる鳥や花のイメージは、奈良という周りに自然があふれていた環境で育ちましたので、そこから浮かんできています。


大垣 え、最初に完成イメージがあって描いているのではないのですか。


石賀 その時にできた空間に自分の好きなものを入れていこうと鉛筆を走らせているので、完成するまで何ができるのか自分でもわからないんです。
 丸を描こうとして、それがゆがんでしまったとしても、消しゴムで消すのではなく、そのゆがんだ場所に花を咲かせようと描いていくことで、偶発的に面白いものができます。そういう意味では「自然にイメージとして湧き上がってくるもの」が自分の作品のテーマなんだと思っています。


大垣 切り絵を始めたきっかけは何だったんですか。


石賀 彫刻家の祖父が作った仏像がずっと周りにあって、彫刻刀が所狭しと並んでいました。そのような環境で育ったので、自然と幼稚園ぐらいから、木切れを拾って彫刻刀で遊んでいました。
 そんなことをしているうちに「ナイフで紙を細く切っていったらどうなるんやろう」「自分で描いた絵を切ったらどうなるんやろう」と、どんどん紙を切ることに夢中になっていました。
 その時はまだ特別なことをしてる感覚はなく、どういったものが切り絵だという認識もなかったので、遊びの一環として絵を描くか切り絵をするかといった状況でした。
 本格的に切り絵をやろうと思うようになったのは、平成25年にコンクールで入選したのがきっかけです。やればやるほど切れる線が細くなるし、表現の幅も広がる。絵と違って切ったものを手に持ち上げたら背景が変わり、光を通したら影も出てくることから、作品としての広がりがすごいなと楽しくなっていきました。


大垣 広がりといえば、イヤリングやペンダントなどの装飾にも切り絵を取り込んで作られていますよね。


石賀 切り絵は見る角度や光の当たる角度で見え方が変わる特性があります。ペンダントは土台に和紙をひいて、金箔などを入れながら、レジンという樹脂を流しこみ切り絵をはさんで作っています。そうすることで光を当てると、ペンダントの中で影ができるようになっています。実際に室外で身につけていただいたら、光の角度で全然見え方が変わるんです。
 切り絵は額縁に入れたら飾っておくだけといったイメージの方がほとんどだと思いますが、アクセサリーにすることで、そういった楽しみ方もできるようになるんです。


大垣 将来的に挑戦したいこと、目指したいことはありますか。


石賀 切り絵というものが、どういった使い方ができるのか考えていきたいです。アクセサリーもその一段階。切り絵という自分がしていることに広がりを見つけたいと考えています。
 また、人とのつながりが増えたら作品の幅も広がると思っています。色んな人と話したり、出会ったりすることで刺激を受けて自分の中から自然と沸いてくるイメージに幅を出していきたい。そうして、自分の技術や精度を高めて表現をもっと豊かにしていきたいです。


大垣 10月に大阪で個展を開くとお聞きました。その際にまた新たな切り絵が見れるのを楽しみにしています。


 

いしが・なおゆき
  1984年12月生まれ、33歳。奈良市出身。小学生のころから切り絵を始め、2013年に国際切り絵コンクールで入選。以降、「扇面芸術展」で奈良県教育長賞、「Heart Art in LISBON 2016」で日葡芸術優秀賞などの受賞経験を持つ。自宅でワークショップも開催。日程は下記の公式サイトでご確認ください。
URL:http://www.naoyuki-ishiga.com/

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