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奈良の工房でバイオリン製作
「音色に奈良の風景映したい」

(取材日:平成28年10月)

 中学、高校の青春時代を奈良で過ごしたシンガーソングライターで俳優の大垣知哉さん(写真左)が、奈良にゆかりのある伝統を継ぐ人や一流のエンターテイナーたちと、奈良への思いを中心に対談します。

弦楽器製作者 岸野 大さん

 大阪の弦楽器工房で7年間修行した後、奈良に工房を構えた弦楽器製作者の岸野大さんは「バイオリンは完成した後も100年、200年と弾き続けられることで音が熟成していく」と話す。バイオリン製作に、日々工夫を続ける岸野さんと大垣知哉さんが対談し、岸野さんは「手作りの楽器は、製作環境や使った素材で完成したときの音色が変わる。奈良でしかできない音色を作っていきたい」と楽器製作に込める思いを語った。


大垣 大学卒業後に大阪の工房で修行をされたとお聞きしましたが、弦楽器に関係する大学だったのですか。


岸野 音楽とはまったく関係のない文学部の歴史学科でした。そこでオーケストラ部に所属していた先輩から、「部員が少ないので入らないか」と誘われて入りました。弦楽器は吹奏楽と違って、素人で始める人が多かったんです。私もそこで初めてバイオリンに触れました。


大垣 そうなんですね。大学を卒業され、どうして弾くほうではなく作ることに魅力を感じたのですか。


岸野 先輩に楽器のメンテナンスで工房に連れて行ってもらったときに、作業風景を見て、とてもおもしろそうに見えて、作る仕事をしたいと思うようになりました。大学卒業後は、すぐに大阪の弦楽器工房に行き弟子入りして、7年間勉強させてもらいました。
 そして、一通りのことを自分でできるようになり「そろそろ独立しいや」と言われる形で独立しました。奈良には小学生時代の夏休みに過ごしていた祖父母の住んでいた家があり、住む人もいてなく、空き家にしててももったいないと、平成23年にその家を自宅兼工房としてスタートしました。


大垣 楽器を作るのは環境や湿度によってできが違うと聞きましたが奈良はどう感じましたか。


岸野 奈良はすごくゆっくり時間が流れてて、そういう中で楽器が作れるのはいいなと来てから感じました。楽器のできはすべての要素が要因になってくると思います。一本一本個性があるのが、こういう手作りの楽器のおもしろいところだと思います。


大垣 奈良の人々のやさしさや環境、気温などあらゆる条件が影響するのですね。6月に工房を学園前から富雄に移されましたが、そのきっかけについて教えてください。


岸野 学園前の工房はもともとが住居ということもあり、家の中の一室という形だったんです。弦楽器を結構弾いてる方は訪れてきてくれましたが、あまり詳しくない人たちは、存在すら知らない状況でした。
 もともとお世話になっていた大阪の工房は外からよく見える作りになっていました。工房の前を通る人がみんな中を見ていき、楽器に詳しくない人でも「おもしろそうだな」と覗きにくる。そこから色んな繋がりができていく環境がすごくいいなと思っていました。ですので、そういう形の工房にしたいなというのがずっとあったんです。


大垣 この工房で岸野さんがしていきたいこと、弦楽器製作者としての目標を教えてもらえますか。


岸野 ひとつは私が作った楽器に限らず、関わった楽器を持った子どもさんなどが音楽を楽しみ、音楽家の道に進んでくれるとうれしいです。
 もうひとつは、ここでしか作れない楽器というものを大切にしたいです。バイオリンはある程度使用する素材が決まっている部分が多いんですが、奈良らしいものを使える部分に使っていきたい。
 ニスを塗る前に木を染めるんですが、その染め具合で模様も色んな出方があったり、木の色みも変わってきます。正倉院の中には漆(うるし)塗りの宝物が伝わっています。その下地には昔から木を染めたり、布を染めるのに使われている「蘇芳(すおう)」という色素があるんです。
 その「蘇芳」で染められている工芸品の復元されたものを見ると、すごく深い赤で奇麗なものだったんです。それを取り入れてバイオリンを製作できないかと現在、試行錯誤しています。奈良らしい素材を使って、奈良でしかできない音色を作っていきたいです。


大垣 ぜひ、奈良の壮大な空と吹き抜ける風を感じられるようなバイオリンを作っていただきたいです。


きしの・だい
 1980年生まれ。2004年に大阪の弦楽器工房に入社し弦楽器の製作、修理、調整などを学ぶ。2009、2012年にイタリアのクレモナで開かれるトリエンナーレ国際弦楽器製作コンクールに参加、DIPLOMAを取得。2011年、独立し奈良市学園前に岸野弦楽器工房を開設。2017年6月に工房を奈良市富雄に移転した。
 
【撮影場所】岸野弦楽器工房
住所:奈良県奈良市富雄元町3-3-16-2
電話:742-53-2800
定休日:日曜・祝日 ※ご来店の際は事前にご予約ください。
URL:http://kishino-gengakki.com/

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