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儲かる農業確立目指し 若い世代への環境作り

アスカグリーンファーム取締役社長 山本 人彰さん

(取材日:平成30年10月)

 希少な白いキクラゲを栽培している五條市相谷町のアスカグリーンファームは、商標登録した「明日香きくらげ」のビジネスモデル構築に取り組んでいる。米の栽培は300坪で年間約9万円の売り上げだが、白いキクラゲは同じ換算で約2700万円にもなるという。同社の山本人彰社長(53)は「若い世代が農業を始めやすい環境を作りたい」と話し、土地の有効活用、雇用、収入になることの3本柱を確立し、若い農業の担い手のための道を拓く。


 三重県出身の山本社長は、県立朝明高校を卒業してからの20数年間は美容化粧品を開発し販売する業界に身を置いていた。しかし、40歳を過ぎた頃に他業種で地域貢献や支援などに力を入れている人との出会いから、自分も社会貢献できる仕事がしたいと考えるようになった。そのときに少子高齢化により農林水産業に若い担い手がほとんどいないという状況を知り、農業の道に入ることを決めた。
 若い担い手が増えないのは「きつい、きたない、くさい」といった「3K」に加え、「儲かるイメージがない」ということだと考えた山本社長。
 「限られた土地で何を作ったら生産者が安定した利益を見込めるか―」と大和野菜の販売や、スーパーに並ぶ野菜の過去の販売データから利益率を調べた。そんな検証を始めて出会ったのが「白いキクラゲ」だった。
 白いキクラゲは通常の黒いキクラゲが突然変異したもの。山本社長によると「1万分の1の確率」で出てくるという。山本社長はその白いキクラゲを見たときに白鹿のような神々しさから「何か特殊な効果があるのでは」と感じた。成分を調べてみると、ビタミンDやカルシウム、コラーゲンなどが黒と比べて想像以上に高い数値で含まれていることが判明した。
 美容業界に身を置いていたことで世界中の美容化粧品に含まれる成分の知識もあった山本社長は「この白いキクラゲは食べるだけではなく美容用品などの原材料として提供することができる。大量生産することができれば、安定した売り上げと利益も見込める」と考えた。
 さらに「1つのハウス(60坪)で年間9㌧収穫できるキクラゲは、ほかの作物を作るよりも狭小の土地でより多くの利益が見込める。そして新たな雇用が生まれる。またキクラゲの将来性から投資が受けやすい」と語り、若い人たちの道となるビジネスモデルの構築に励む。
 白いキクラゲの栽培は順調に進み、開始してから1年目には培養に成功。数々の実証データも得て、安定して白い色が出せるという。しかし「培養したものをさらに培養し続けると黒に戻ってくる」と山本社長は白い色を出し続ける難しさも語る。
 栽培中、納豆を食べたスタッフは栽培ハウスへの立ち入りを3日間は禁止にしている。それほど、きくらげは菌に対して非常に敏感。さらに湿度70~80%、温度25度といった栽培環境はカビにも適しているため、毎日3回、きくらげにカビが付いてないか目視でチェックが必要となる。
 そんな苦労は絶えないが、山本社長は白いキクラゲが、農業を担う若者の光になると信じて、日々の研鑽に努める。

やまもと・ひとあき 
 昭和58年、三重県立朝明高校卒業後、株式会社サガミチェーンに入社。60年に退社し62年には美容品販売業を開業。美容品、化粧品、体型補正下着の販売を開始する。平成7年には有限会社ヴィヴァーチェを設立し代表取締役に就任する。その後事業を拡大し、自動車販売業、保険の取り扱いなどを営む。社会貢献を考えるようになり平成26年からは日本植物工場株式会社の副社長に就任し農業に携わる。翌年にはきくらげとの出会いをきっかけに儲かる農業の確立を目指し株式会社アスカグリーンファームにてキクラゲの栽培事業を開始し29年に取締役社長に就任する。

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